婦人科・産科
妊娠20週の超音波による胎児スクリーニングについて
■背景
1. あらゆる女性は、年齢に関わらず、重い先天性異常をもった赤ちゃんを出産する可能性があります。その確率は、2〜3%です。

2. 重い先天性異常によって、胎児死亡あるいは新生児死亡、知的障害、成長障害が引き起こされるかも知れません。重い先天性異常は、治療困難なこともあれば、薬や手術によって完全に治る場合もあります。重い先天性異常は、また、両親の経済的重荷あるいは心理的負担となるかもしれません。

3. 胎児超音波検査は、胎児の先天性異常を見つける手段のひとつです。超音波は、母体にとっても胎児にとっても安全です。

4. 一般的な超音波検査では、詳細な胎児の観察をしていません。それは、普通の妊婦の先天性異常児出産の危険率は、非常に低いからです。

5. しかし、先天性異常をもった赤ちゃんの出産の95%は、普通の妊婦に起こっています。それ故、普通の妊婦に対する妊娠20週の超音波による胎児スクリーニングは、先天性異常をみつける可能性を高めるのに効果的な方法です。もちろん、生まれる前に、あらゆる先天性異常を見つける出生前診断法は有りません。



■妊娠20週の超音波による胎児スクリーニングとは何ですか?
これは、おもに胎児の先天性異常を見つけるために、妊娠20週頃(普通は18週から22週のあいだ)に行われる超音波検査です。これは、詳細な検査ですので、いつもより時間がかかっても胎児に異常があるということではありません。検査には15分ぐらいかかります。

■なぜ妊娠20週にするのですか?
もし胎児が小さすぎれば、胎児の細部を超音波で写すことが困難です。しかし、胎児が大きすぎれば、胎児の骨の石灰化のため、超音波がさえぎられてしまいます。それゆえ、妊娠20週が、胎児の細部をみる最適の時期となります。

■超音波スクリーニングの短所は何ですか?
超音波検査は100%正確ではありませんので、もしスクリーニングの結果が異常なしで、出生後、予期せず、赤ちゃんが異常であるとわかったとき、お母さんはたいへん落胆するでしょう。それとは逆に、超音波検査で異常が疑われて、出産後正常であることがわかれば、お母さんは、不必要な心配をすることになるでしょう。また、染色体異常が疑われれば、その確認のために、侵襲的な検査(例えば羊水穿刺)をする選択をするかもしれません。これは、本来、正常な胎児を流産する可能性が有ります。

■スクリーニング結果が“正常”ということはどういう意味ですか?
ほとんどの超音波スクリーニングの結果は“正常”です。もちろん、”正常”という結果は、先天性胎児異常がないということを保証するものではありません。形態的ではない異常(例えば、知的障害、視覚障害、聴覚障害)あるいは、形態異常ではあるが、あまりに小さいもの(例えば、小さい心室中隔欠損)あるいは、超音波的特徴のないもの(例えば、鎖肛、ダウン症のほとんど)などは、出生前の超音波検査ではみつけることができません。ある異常(例えば、小腸閉鎖、四肢短縮症)は、妊娠後期になってはじめて明らかになります。肥満、羊水が少ない、胎児の位置がわるいことなども、スクリーニングの正確さに影響します。一般に、重い胎児先天性異常の70〜80%は、超音波スクリーニングでみつけることが可能と言われています。それゆえ、スクリーニングの結果が”正常“であれば、胎児異常の可能性はとても低いです。

■もし結果が”異常“であれば、どうすればよいですか?
ある胎児異常(例えば、無脳症、水頭症、二分脊椎、口唇裂)は超音波検査で直接診断できます。 時には、診断のために追加の検査が必要になります(例えば、染色体異常の場合)。いずれにしても、異常が見つかれば、高次医療機関(例えば、大阪大学附属病院、国立循環器病センターなど)を紹介し、出生前の胎児、出生後の赤ちゃんのために、最善の治療が行えるようにします。

■超音波スクリーニングを受けないことを選択しても良いですか?
一般に、ほとんどの胎児は正常なので、先天性異常の危険率はとても低いです。もしお母さんが、胎児スクリーニング検査の短所を心配されるなら、あるいは、理由はどうあれ、出生前に胎児の状態を知りたくないと言うのであれば、胎児スクリーニングを受けないという選択もあります。その場合は、担当医師にその旨をおっしゃって下さい。




BACK
 
Copyright (C)
ふかみレディースクリニック.
All Rights Reserved.